ご予約は電話(06)6374-5556で承ります。

(医)太一会
ながしまクリニック漢方内科


ながしまクリニック
漢方内科

ながしまクリニック
漢方内科

ながしまクリニックCOLUMN

操体法、その後

投稿日: 2014年09月04日

8月29日(金)の読売新聞夕刊、シニアのページに奈良操体の会、北村翰男先生の活動が大きく掲載されました。ながしまクリニックに、指導に来て下さる、落合久美先生、安枝弘枝先生は北村先生のお弟子さんです。

今年の小太郎漢方製薬の「漢方研究」夏の随筆号に掲載していただいた、私の文章もご笑読下さい。去年の7月のブログと一部、重なりますが、ご容赦のほどを。

「90代、寝たきり6年、褥瘡も関節痛もなく穏やかに逝かれたのは、操体法の創始者、仙台の橋本敬三先生のことである。橋本先生は90歳の頃、大腿骨を骨折され、腎機能が悪く手術が出来ず寝たきりになられたにもかかわらず寝たまま操体法を実践されたとか。昨年、この事を聞き知り、操体法は寝たきりでも無理なく勧められる健康法だと再認識した。

一昨年、このコラムで紹介したが、更年期になり運動音痴の私自身の身体がいっそう軋んできたのをきっかけに「奈良操体の会」北村翰男先生のお弟子さん達にご指導いただき、診療所でささやかな操体法の講習会を続けている。北村翰男先生は聖光園細野診療所門下の大先輩格の漢方家。操体法の威力に目覚められてから普及に尽力され、いまや「薬を売らない薬局?」を自認されている。北村先生は、瀕死の患者さんを見舞い「身悶えるように動いて、丹田から深く呼吸して」と操体法を指導され(漢方薬も多少は出され)、退院して長く元気に延命された症例を何例も経験されたそうである。北村先生のご指導は、年々、微妙なミリ単位の動きに変化されているように思う。息(呼吸)、食(食事)、動(運動)、想(精神)の自立と自律に及び、これはもう、微妙に動く座禅のような感覚である。

講習会には毎回私も参加、常連のおばちゃん達とまずは般若身経(心経ではなく身経、橋本先生命名の基本動作)、ペアでほぐしたり、寝そべって動いたり、身体が壊れない動き方、アイロンのかけ方、掃除の仕方にまで及び、心身ともに緩んで、きゃあきゃあと賑やかである。悪性腫瘍や糖尿病に関節リウマチを併発されている患者さん達はさすが熱心に取り組まれ、漢方と操体法だけで痛みからかなり解放されている。脳梗塞後、半身の動きが悪い方は全身の可動域が次第に改善し「リハビリより痛くない」と喜ばれ、五十肩が一瞬で改善したり、初めて参加された70代女性が10年ぶりに正座されたり、20年来のパニック障害や、長年のアトピ―性皮膚炎、うつ病の方達にもリラックス感が好評で改善の一助になっている。術後の癒着などの頑痛に悩む患者さん達にも好評である。ヨガを指導されている患者さんは「操体の方がバランスが整い参考になります」と言われる。しかし残念ながら、もっとも取り組んでほしい、激務の勤労世代、子育て世代、通院がおっくうになる高齢者世代はなかなか参加する余裕がない。動きが地味なので、こんなの簡単だ、と効果が解らぬまま真面目に取り組んでもらえない事もある。本当に身体が弱った時、毎日少しずつ続けて操体法の真価に気付けた患者さんは「私、頑張ってばかりの生き方が間違っていた」とさえ言われる。きっと年齢を重ねても、橋本敬三先生のように「極楽浄土だねぇ」と穏やかに逝かれるのだろう。

この春、奈良操体の会のメンバーで、在宅介護に取り組んで来られた看護師の坂本洋子氏が「家庭でできるラクラク介助法・介護操体のすすめ」というDVD付きの本を農文協から上梓された。(1800円+税)巷に溢れている介助法よりはるかに楽で、介助される者も介助する者も身体が痛くなく元気になれる工夫でいっぱいの本。介護に関わる方々に是非ともお薦めしたい。

福岡の義姉も正月に会うとそろそろ膝関節が動きにくい様子、たまたま近くで福岡操体の会、山下悦子氏が指導されており、薦めると熱心に通っているらしい。山下氏は「本当の良さがわかるまで私は20年かかりました。まだまだ知らない世界が広がり、老後の楽しみが増えました」と言われる。義母の初盆に福岡に行ったら、義姉の上達ぶりを見たいと思う。私自身もまだまだ体得にはほど遠いけれども。老後の楽しみは確かに増えた気がする」