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(医)太一会
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転居、転職と算命学

投稿日: 2019年06月04日

(小太郎漢方製薬の漢方研究2019年に掲載されるエッセイをご紹介します)

転居や新築をした途端に病を得て早死にされたり、職場環境が悪く環境を変えても体調不良をきたしたりする患者さんを経験することがある。

転居や新築、転職に関して当方に相談なく決めてしまわれた場合は仕方がないが、事前にお話を伺うと、算命学を学んでいる以上、時期や方角が悪くないのか、気になってしまう。天冲殺(四柱推命では空亡)の年や月に、何かを始めると実際にろくなことはないのを見聞きしてきたからだ。算命学の成書には、天冲殺に下手な動きをしないだけで、人生の苦労は半減する、とまで記されており、余計に気になる。

30年近く前から、市井で算命学を極められた坂本吾都子先生とお付き合いがある。算命学は四柱推命を更に詳しくしたような運勢学で、古代中国で発祥した干支暦をもとに、年と月と日(時間がわかれば時間も)の干支を出して、人の運命を占う陰陽五行を駆使した占星術が原型である。第二次大戦後の中国で共産党革命が起こり、伝承者であった呉仁和が日本の長崎に亡命し、高尾義政が生涯をかけてそれを継承し、日本で学問として大成した。成書は日本語で書かれているから助かるのだが、奥が深く哲学の様相すらあり、大部でそう簡単には習得できない。患者さんに尋ねられたら答えられるように少しは勉強をしているが、学校に通っているわけでなく、先生のところに伺った時に質問する程度で、基本の8冊本を読破し、暦なども揃え、最低限の基本の個人の年運も含めた人生のチャートは書けるようになったが、本業ではないので数もこなせず、先生のように鑑定者の人生を見てきたようには伝えられない。そうこうしているうちに坂本先生は90歳になられた。頭脳明晰で全く認知症も出ず、生き生きと話される。新規の方は受け付けない、と言われながら、古くからの依頼者は何故か全国の医者が多く、今も遠方から相談に来られる。

先生は60代の頃、ご自身の死期を予見し、家財産を整理してその日を迎えられたが、幽体離脱して自分の遺体を見ながらまた戻って来てしまわれた。以後、無欲でつましく献身的な生活ぶりである。90歳を迎え、死期はどう予測されているか私もだいたい判るので、さぼりがちだったが、初夏になって意を決し、成書「算命学秘伝書1・2」の2冊を読破した。自分の周囲に照らしてもあまりにも納得がいくことばかりで、人生の指南として多くの方に役立てていただきたい思いを新たにした。とはいえ、先生に質問出来る時間も今後、そう長くはないのが辛い。

先生が最低限はここまで調べないと物は言えない、と言われる人生のチャートを作成するのに1人につき2時間はかかる。普段の診療で、算命学をじっくり調べ、危急の事象に相談に乗る余裕はない。勿論、余裕がある時は調べて、先生の所にお連れして確認しながら伝えているが、とても追いつかない。困っていたところ、四柱推命と九星を深く勉強され、結構、霊感もあり的確なアドバイスが出来る私と同世代の女性が数年前から通院されるようになり、急ぎの方はその方をご紹介して、大いに助かっている。明るい大阪のおばちゃんを地で行くような方で、「今だ、行け~」とか「来年まで待ち」「相性悪いからやめとき」「今、借金したらあかん」「この物件に決め」とかはっきり言って下さるので大人気である。

不思議と良い年回り、月回りの時には良い物件に出会ったり、良い転職が出来たり、良い出会いがあったりするものだ。また、自分自身がどう生きれば良いかはもちろん、家族や周囲の人達の性格や本質、自分との生き方の相違がチャートを通して判れば、取り越し苦労の軋轢も軽減していく。人生に苦労はつきもの、とはいえ、少しでも良い環境に身を置いてこそ病も癒される。何人もの患者さんが、上手く就職したり、転職したり、転居したり、良い時期を待ったりして心が穏やかになられる時は漢方も一層、効いてくるように思う。